以下に紹介する話は、脚色無しの実話です。
日本の眼鏡業界をリードするはずのトップメーカーで起こったことを、嘘偽りの無い率直な言葉でお伝えいたします。
少々、専門用語を使わないと説明できない場合もありますが、その点はご容赦ください。
一流メーカーのレンズだから安心、と妄信してはいけません。
老舗、一流ブランドの名に胡坐をかいているメーカーもあるのです。
レンズはブランドにこだわらず、個別の品質を確認し、
製造メーカーとしての倫理や姿勢、信頼で選ぶべきだと、私は考えます。
1.60の高屈折プラスチックレンズが、アッベ数36から同42の素材に切り替わった時期のことです。
取引先の問屋が、「○○から新しいレンズが出たからモニターとして使ってみて欲しい」と
私の度数のレンズを提供してくれました。
当時は、
R=Sph-2.00 Cyl-1.00 Ax95
L=Sph-1.75 Cyl-1.25 Ax72
くらいの度数だったと記憶しておりますが、
提供されたのは屈折率1.60の非球面レンズでした。
早速、手持ちのツーポイントフレームのレンズをこのレンズに交換したところ、
何となく違和感を感じ、しばらくすると左眼が重いというか痛いというか、不快感を感じるようになり、
何か加工ミスでもしたのか?と点検しましたが問題はありません。
別のフレームだったらどうなんだろうと思い、もう一組、自費で取り寄せてみました。
レンズを袋から出し、加工台の上に置くと、おかしなことにレンズの後面がペタッとくっつきました。
(乱視のつけ方で前面トーリックと内面トーリックの2種類がありますが、
当時は内面トーリックが主流で、内面トーリックのレンズを台上に置くと後面には浮き上がる方向ができます)
前面トーリックかと思いメーカーに確認すると、前面非球面・内面トーリックだと言うのですが、
カーブ計で計測すれば、明らかに乱視は前面に付いてます。
状況を説明すると、レンズメーカーの営業担当部長と工場の責任者と称する人物が訪ねて来て、
原因を私に説明しました。
「アニールの際、レンズ基材の耐熱性が高いことが災いして、
軟化した基材が重力によって垂れてくる」
というものでした。(レンズを成型した後、均質にするために再加熱することをアニールといいます)
ところが、 その工場の責任者と称する人物は、
「自然に規則的に垂れているから実用上は問題ない」
という趣旨のことを私に言いました。
私の口から烈火のごとく抗議の言葉が出たことは言うまでもありません。
非球面レンズというのは、収差の軽減のために高度な計算を行って決定した曲率が命なのですから、
その曲率が設計と違うものになっている以上、問題ないはずがありません。
その証拠に、
後日、「アニールは前面用のモールドに載せ、下に向けて行うようにしたので、
もうあのようなことは起こらない」
と連絡がありましたが、
レンズメーカーとして言ってはならないことを口にした会社など、相手にする価値もありません。
もしやと思い、同素材で同じ度数のレンズを問屋を通じて他メーカーから取り寄せたところ、
案の定、同じ現象が起こっているものが2銘柄ありました。
問屋を通じてメーカーに伝えてもらったのですが、返事すらなく、信頼できないメーカーとして取引はしなくなりました。
それから月日は経ち数年後、レンズ業界に再編の動きがあり、メーカーの吸収合併が行われ、
このうちの1社と繋がりができてしまいました。
たまたまこのメーカーのセールスが来ているときに、
R=Sph+1.50 Cyl-3.00 Ax80
L=Sph-0.50 Cyl-1.00 Ax100
というレンズの注文があり、
試しにこのメーカーに注文を入れてみました。
数日後、届いたレンズを確認して驚きました。 なんと、未だに同じ現象が起きていたのです。
そう、このメーカーは10年近くもこんな欠陥レンズを出荷し続けていたわけです。
すぐに担当セールスにこの旨を抗議すると同時に、別のメーカーにレンズを手配したのは言うまでもありません。
PS:株式会社*********のコ*ノさん
この件に関して、御社の見解や今後の対応について、調査のうえ後日報告するとのことでしたが、
未だに連絡を受けておりません。地域担当の営業マンが交代したようですが、
そちらからでも構いませんのでご報告ください。
玉型加工というものがあります。
専用のトレーサー(フレームの型を測定する装置)を使い、フレームデータを電送すると、
メーカーからフレームの形に削ったレンズが送られてくるというものです。
凸レンズの無駄な厚みを省き、薄くて軽いレンズが出来上がります。
この玉型加工を行っているメーカーは多いのですが、
某メーカの玉型加工導入時のセールスポイントには、
「5/1000ミリの精度」「枠入れに必要なのはドライバーとフレームヒーターだけ」というのがありました。
5/1000ミリ単位の精密な加工を施し、レンズをフレームに入れるのに必要なものは、
ネジ回しと、セルフレームの場合はフレームヒーター(セルフレームの場合、加熱して柔らかくしてからレンズを嵌め込みます)
だけで済むというわけです。
当初から5/1000ミリの精度は大袈裟過ぎという感じはありましたが、
それでも簡単に手摺りで修正することが可能な程度のバラツキで収まっていました。
ところが・・・・
この玉型加工で送られてきたレンズを、いつものように枠入れしようとすると、
フレームの合口が1ミリ、1.5ミリと隙間が空くことが続きました。
要するに、フレームの周長よりもレンズの周長が長すぎるいうことです。
メーカーに連絡すると、トレーサーの初期設定を行えと、そのマニュアルが送られて、
そのマニュアル通りに初期設定を行い、これで大丈夫と安心していると、
今度は3ミリも合口の合わないレンズが送られてきました。
メーカーの機器担当者が調整をしにきましたが、やはり改善されることはありませんでした。
挙句に、その担当者曰く、
「最近はレンズ素材の種類が増えて、正直なところ、素材ごとに仕上がりサイズが違ってしまうんですよ」
と、のうのうと言い訳にもならない言い訳する始末でした。
現在は、アンカット方式という、薄型加工のみを施して、玉型カットは自店で行うようにしました。
球面レンズと非球面レンズ。
勘違いされる方も多いのですが、必ずしも球面レンズは非球面レンズに劣るわけではありません。
球面レンズの曲率を下げて、薄くて軽いレンズを作ろうとすると収差が発生するために、
それを補正するために非球面設計を行うということです。
ある一定の曲率を持った球面レンズならば、収差の点で非球面に劣ることはありません。
厚みや重さの問題とならない度数では、非球面にするメリットは余りないばかりか、
平たいレンズでは裏面反射の映り込み、フレームカーブとの不適合などデメリットも多いのです。
かなり以前になりますが、あるメーカーが、一見、画期的と思われるレンズを発売しました。
比重が1.12と、非常に軽量な中屈折球面プラスチックレンズです。
球面レンズなのに低カーブ設計で、中心厚もギリギリまで薄く設計されており、
中屈折でありながら高屈折レンズに匹敵する薄さ、そして低比重のために非常に軽量という特徴がありました。
テレビコマーシャルも頻繁に行われ、
メガネを掛けた若い女性が体重計に乗り、「レンズを○○に換えた○○さんは、5グラムの減量に成功しました!」
というナレーションが入っていたのを記憶しています。
ところが、このレンズ、大変な曲者でした。
低カーブの球面設計ですから収差が多いのは当然として、
薄い上にレンズ素材が柔らかいものですから、
適切なサイズにカットしたつもりが、
少し圧力が掛かるだけでフレームから簡単に外れてしまい、
レンズが外れないサイズにカットするとレンズがたわみ、応力集中で凄まじい歪みが発生してしまうというシロモノでした。
一説によると、レンズカットの際、加工器械への取り付けに必要な吸着盤(サクションカップともいいます)を付けようとしたら
レンズが裏返ってしまった、という逸話も残っております。
遅れて同素材を使用した非球面レンズも発売されましたが、
更に低カーブですから、フレームカーブとのマッチングも悪く、歪みが増大したであろうことは用意に想像できます。
当店では当然のごとく販売する価値のないレンズとして取り扱いはしませんでしたが、
数年前に販売中止されるまでの間、10年前後になると思いますが、
果たしてどれだけの量が流通していたのかと考えるとゾッとしてしまいます。
すでに眼鏡業界から撤退した元大手メーカーですから、話を蒸し返すのもなんですが・・・
レンズを製造する際には、どうしても不良品が発生します。
それ自体は問題ないのですが、本来なら廃棄すべきものを、商品として流通させてしまったメーカーがありました。
内部告発によって発覚したものでした。
そういえば、耐衝撃性コートを、本来は2回のディッピング作業で行うところを、
1回で済ませていたことが内部告発によって暴露されたメーカーもありました。
こちらは現在も営業中ですが、この点は改善されたようです。
遠近両用レンズなど、特注品のレンズは、必ず最終的に外観検査を受けて出荷されます。
ところが、この検査というのがいい加減で、傷が入ったレンズ、レンズやコーティングに泡・脈利が入ったレンズが
平気で検査を通り、納品されることがあります。
境目の無い遠近両用レンズには、水平基準線やら度数確認位置やら近用参照円やらとペイントが施されています。
ところが、このペイントがかなりいい加減で、大きくズレている場合も多く、
一旦アルコールなどで拭き取って、刻印されている隠しマークを頼りにレイアウトを行います。
隠しマークというくらいですから、はっきりと刻印されているわけではなく、レンズを傾けたりレンズの反射光を利用して見つけます。
ある日、納品された遠近両用レンズの話ですが、隠しマークを発見するよりも早く、レンズに傷を発見しました。
お客様に納期が遅れる旨を連絡し、レンズを再手配しましたが、
数日後、納品されたレンズにもはっきりと傷が付いており、即座にメーカーに連絡して、
次回はしっかりと検査して出荷するように伝えました。
そしてさらに数日後、3度目に納品されたレンズには、レンズ袋から出した途端に傷らしきものが目に付きました。
ペイントのカスでありますように、と願いつつ、アルコールで拭き取ってみましたが、やはり傷です。
さすがの私も堪忍袋の緒が切れまして、
「同じレンズを10組作れ。その中からこちらが納得するものを選ぶ。出来ないなら今後取引は控える。」
などと頭に血が上った状況でしたので無茶な要求をしたものです。
さすがに10組は送ってこなかったものの、3組ばかり送られてきたレンズの中から傷の無いものを選んで加工しましたが、
完成までに2週間以上を要し、お客様にもご迷惑をお掛けしてしまいました。
実はこの手の話は、1度や2度ではありません。一時期は届くレンズの何割かに(5割以上の頻度です)傷が見付かったほどです。
そして、
一つのメーカーだけではなく、他のメーカーでも起こっています。
レンズメーカーの営業マンと酒を飲んだ際に、製造ラインと検査部門の軋轢という工場の内部事情を耳にすることが出来ましたが、
同情することはあっても、傷の付いたレンズを納品しても良いという免罪符にはならないのは当然です。
傷の付いた箇所からコートが劣化して、新たな傷やコート剥がれの原因になるのは明らかですし、
その被害を被るのは消費者なのですから。
こちらは、品質の問題ではなく、レンズメーカーの不合理な都合で、迷惑を被ってしまうという事例です。
レンズメーカーも企業ですから、営利を追求するのは当然の立場であります。
需要が少なくなってきたために、ガラスレンズから撤退しようとする姿勢も理解できます。
が、CR−39を切り捨てようとする動きには疑問を投げかけざるを得ません。
CR−39とはプラスチックレンズの創世期を支えた、もっとも古いプラスチックレンズ素材です。
この素材の特徴は、何と言ってもアッベ数の高さに尽きます。
歴史のある素材ですから、ハードコートや反射防止コートの技術は、すでに確立された領域にあると思われます。
反面、屈折率が低いために、強度数では厚くなってしまうという欠点があるのも事実です。
さて、アッベ数ですが、これは色の分散率を表している数値で、大きいほど色収差が起こりにくくなります。
屈折率1.50 アッベ数 59 がCR−39のスペックですが、
これ以外の素材のスペックを列挙してみますと、
屈折率1.56 アッベ数
40
屈折率1.60 アッベ数
42
屈折率1.67 アッベ数 32
屈折率1.70 アッベ数 31または
36
屈折率1.74 アッベ数 33
屈折率1.76 アッベ数 33
となります。
(屈折率、アッベ数、比重は眼鏡レンズの3大スペックと言われ、何かを上げると何かが下がる、というジレンマがあり、
これらをバランスよくまとめることが素材開発の要点となります)
ご覧のようにCR−39のアッベ数は特筆すべきほど高くいことがおわかりいただけると思います。
自分事になりますが、私は色収差に非常に敏感です。
一般的にはアッベ数が40あれば、色収差は気にならないことが多いと言われておりますが、
眼とレンズとの距離、傾斜角、レンズカーブなどいろいろな要因にも影響されるものの、
屈折率1.60 アッベ数
42の高屈折素材でさえ、私には色収差が気になることがあります。
ましてや、アッベ数32や33の素材では、常用に耐えません。
ですから、私は今でも自分のメガネには、フチなしメガネを除けばCR−39を愛用しておりますし、
度数の弱いお客様には、自信を持ってCR−39を販売しております。
色収差が無く、値段が一番安い、こんないい素材を切り捨てるメーカーの心理がわかりません。
片目が矯正不可能な方の境目の無い遠近両用レンズ(累進レンズ)の場合、
見えないほうのレンズは、
累進レンズではなく、安価な単焦点レンズで充分なのですが、
メーカーの都合でそれが出来ない場合があります。
あるメーカーでは、累進レンズと、同素材の単焦点レンズとでは採用している反射防止コーティングの種類が違います。
そのままではコートの反射色が違うのでペアリングできないのです。
単焦点レンズのほうを特注して、累進レンズと同じコートを選択すればペアリングは可能なのですが、
量産可能な在庫レンズに比べて、特注レンズは高くついてしまいます。
また、 あるメーカーでは、累進レンズには練り込み式のUVカットが標準装備されているのに、
単焦点レンズではディッピング方式のUVカットが特注で用意されています。
練り込み式のUVカットは、ブルーイングという手法でUVカット付きレンズ特有の黄ばみを軽減していますが、
UVカットの無いレンズとも、ディッピング方式のUVカットを施したレンズとも色が揃いません。
よって、この場合もペアリングできないという事態に陥ります。
これはメーカーに対するお願いです。
白内障術後、あるいは何らかの理由で水晶体を摘出することになった場合には、
今では眼内レンズが使われるようになり、レンチキュラーの需要は激減したのはわかっています。
営利を追求することがメーカー、特に株式公開している会社の命題であることは重々承知しています。
それでも、今でもレンチキュラーを必要とされている方はいらっしゃるのです。
現在の高屈折素材や非球面技術を生かせば、より快適なレンチキュラーをつくることが出来るはずです。
そして以下は、敢えてメーカーを名指しでお願いします。
HOYA様、東海光学様へ
御社では、それぞれ、レチネックス、CCPという医療用フィルターレンズを発売されていますね。
これは主に網膜色素変性症の患者さんの遮光レンズとして使われるものであることに異論はないと思います。
そして、網膜色素変性症の患者さんには白内障を併発される方が多く、
近年まで眼内レンズの挿入は控えられていたこともあり、
遮光フィルターを持ったレンチキュラーを必要とされる方は少なくないはずです。
HOYA様へ
御社には、以前HM2−SASという中屈折素材のレンチキュラーがありました。
レンチキュラーには薄型加工は効果が薄いと他社では採用していませんでしたが、
HM2−SASはMETS対応で、度数によっては他社の高屈折レンチキュラーより薄く軽く仕上がりました。
通常の単焦点レンズ(HM−2)とも価格差は少なく、安価に提供できる高性能レンチキュラーとして重宝していたものです。
是非、このレンズを復活させ、レチネックスのカラーを選べるようにしてください。
東海光学様へ
CCPレンズは、カラーバリエーションも豊富で、単焦点のみならず多焦点レンズ、高屈折素材でも利用できる
医療用フィルターレンズとして、他社には無い特徴を持っています。
これにレンチキュラーが加われば、鬼に金棒と言えるでしょう。
是非、レンチキュラーをラインナップに載せていただきたいと強く希望いたします。
レンチキュラーの仕様としては、1.50、1.60、1.70(JX)の素材、
内径43ミリ程度の非球面シームレス設計、
そしてスライス加工にも対応していただければ、非常にありがたいと思います。
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