壊れないメガネ?

 前回、メガネが壊れた場合にどうするか、をお話しましたが、絶対に壊れないメガネについて考えてみましょう。
メガネが壊れるには理由があります。
それは物理的な衝撃を受けるからです。
「何にもしないのに壊れた」と訴えるお客様もいらっしゃいますが、何にもしないで壊れることはまず考えられません。メガネはほとんど毎日使われていますから、掛け外し、レンズの汚れを拭くときなどの、わずかな力が蓄積されて金属疲労を起こし、あるいはロー付け部分の酸化といった経年変化と相まって、ある時に突然壊れるのです。

 形状記憶合金を使用したメガネフレームがあります。
開発された当時、ニュースやNHKの番組でも紹介され、夢のような素材と大々的に報じられました。
また、メガネ店の、形状記憶合金を全面に打ち出した広告宣伝のせいで、形状記憶合金フレームは壊れないメガネフレーム、と間違った認識をされている方を見かけます。
 チタンとニッケルを分子量で1:1の比率で合金とし、熱処理を加えることで、形状記憶性と超弾性という異なった二つの特性を持たせることが出来るのですが、メガネフレームはこのうち超弾性の特性を利用したものです。
これは、 ある程度の荷重を加えても、ほぼ元の形状に戻るのですが、限界を超えるとやはり壊れてしまいます。また、メガネフレームのすべての部分に使用されるのでは無く、ブリッジ部だけ、テンプル部だけ、あるいはその両方に使用されますが、それ以外の部品は形状記憶合金は使われていません。
メガネフレームは、各人の顔に合わせて調整するため、全体が形状記憶合金ではフィッティングできないのです。

 壊れない(現在よりも壊れにくい)メガネを作ること自体は、不可能ではないと思います。
消耗部品を除けば、メガネが壊れる場所というのは割と限られています。
専門用語で言うと、クリングス、ブリッジとリム線の繋ぎ目、智、テンプルの蝶番といったところ。
ロー付けによる部品同士の接着が不要な様に、前枠を金属塊から削りだし、テンプル(つる・腕)を強固な蝶番を使い繋げれば、よほどのことが無い限り壊れないでしょう。
ただし、コストの問題、見た目も悪く、重さのために掛け心地は相当悪いものになってしまうでしょう。

 では、仮にコストとデザイン上の問題がクリアされ、掛け心地のほうもさらに軽い金属を使って改善されれば、それでよいのでしょうか?
答えはノーです。
万が一、顔面にボールが直撃した場合、あるいは交通事故などで顔面に強い衝撃を受けた場合、メガネが壊れてくれないと、メガネのせいで顔面に重傷を負うこともあるでしょう。メガネが壊れることによって衝撃を分散し、あるいはメガネが顔から外れ飛んでいってくれる方が怪我は少なくなると思われます。
そういう意味で、メガネをスポーツバンドなどで固定して使うのは危険と言えます。
小さなお子様用のフレームの中には、「巻きつる」といって耳に巻きつくような形状のものがありますが、これもメガネの逃げ場がなくなり危険な場合があります。

メガネを壊さないようにするには

 壊れないメガネを望むより、メガネを壊さないように使う方が得策と言えます。
では、メガネはどうして壊れるのでしょうか?
メガネは、顔に掛けている状態よりも、外しているときに良く壊れるようです。 それも、うっかりミスで壊してしまうことが多々あります。
具体的には、ソファーや座布団の上に置いて、座ったり踏んでしまう。
テーブルの上に置いていて、上から重いものを乗せてしまう。
枕元に置いて、夜中にトイレなどに立ったときに踏んでしまう、といった具合。
踏んだり座ったりするような場所にさえ置かないように気を付けさえすれば、防げる事故といえます。

 あるいは、掛け外しのときに片手でやってしまうこと。不均一な力が加わることで、わずかずつ金属疲労は蓄積されてしまいます。そしてテンプルは広がり、直す際にまたストレスが加わる、という寸法です。
 また、フレーム素材にチタンが採用されてから、リム(レンズを覆う金属の線)切れによる破損が増えました。チタンは軽く堅牢というイメージがありますが、メガネフレームのような細い線材に加工し、ロー付け等の熱処理を加えると強度が弱くなるという欠点があります。初期の頃に比べれば飛躍的に改善されてはいますが、まだ完全に解決されたとはいえません。
この破損を防ぐには、レンズ拭きで強く拭くのではなく、拭く側のレンズの外側を持って優しく拭くことです。
先にメガネ全体を水洗いしたり、レンズ拭きの布をいつも綺麗に洗濯しておくことで、軽く拭くだけでレンズを綺麗にすることが出来ます。

 結論を言ってしまえば、毎日の取り扱いひとつで、いつまでも壊さずに使うことが出来るのです。
メガネは、貴方の視界を確保する大切なパートナーです。
自身の眼の一部と思って、大切に接してください。

スポーツ用メガネ

 コンバース、エレッセ、セルジオ・タッキーニ など、一般的にスポーツ用品のブランドを冠したメガネフレームがあります。一見、スポーツ用のフレームと思われがちですが、実際はスポーツに特化した造りになっているとは限りません。
また、スポーツ用と銘打って販売されているフレームは、汗止めが付いているとか、ずり下がってこないような工夫を施していますが、強度については特別スポーツに向いているというものではないようです。

  球技や接触を伴うスポーツには正直なところメガネは不向きと言えます。
それでもメガネを使いたい、という場合は、破損しやすいのは覚悟の上ご使用いただきたいものです。
同時に、メガネによって顔を傷つけたり怪我をしないようにお気を付けください。

 参考までに、オランダの有名なサッカー選手、ダーヴィッツ選手は、緑内障で眼の手術を受け、その後ゴーグルのような保護眼鏡をして復帰しました。
また、名前は失念いたしましたが、NBAのバスケットボール選手にも何名かは同じようなゴーグルを着用して試合に出場しています。
ポリカーボネート製のフレームにゴムやスポンジのクッション付きの鼻当て、そしてゴムバンドで固定する形です。日本では、スポーツサングラスメーカーとして有名な山本光学様から、スポルディングのブランドにて似たようなデザインのフレームが発売されています。度付きも可能ですので、一度ご検討されてはいかがでしょうか。

 

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