よもや話
目脂が濃い
穴水町に住んで早20年余り。
土地の言葉も完全に理解できるようになり、地元の方と話すときは穴水弁で会話するようになりました。
生れは金沢ですから、もちろん金沢弁も完璧ですし、大阪で4年暮らしており、今も、年に数回は大阪へ商品の買い付けに行き、夜は学生時代の同級生とも親交を深めたりしています。(笑) その大阪の友人と話をするときは大阪弁を使いますし、私は3つの言葉を理解し使い分ける、いうなればトライリンガルなのです。(笑)
さて、今では完全に穴水町の人となった私ですが、こちらに来た当時は言葉に悩みました。同じ石川県とはいえ、加賀の国と能登の国では言葉が全然違うのです。細かく言えば、同じ能登でも更に先端に近い地域では、「漁師言葉」と呼ばれている方言があり、これは今でも完全には理解出来ていません。
初めて、そして最も戸惑った言葉は「やにこい」というものでした。
お客さん「目がやにこうて、何とかしてくたい。」
私「・・・・・・やにこうて?・・・・」
お客さん「そやから目がやにこいんやて」
私「(絶句)・・・・・・・・・」
「くたい」というのは「ください」という意味です。これはその時点で理解していましたが、「やにこい」 というのは初めて耳にする言葉でした。
「目がやにこい」→「目脂(めやに)が濃い」→「目脂がたくさん出る」と連想するのは自然だったと思いますし、
「目脂がたくさん出る」ということは、花粉症も現在ほど問題とならなかった当時、流行性角結膜炎を連想するのは当然のことでした。
そして、流行性角結膜炎なら、二次感染防止のため、お客さんが触れたドア、ガラス、椅子の類はすべて消毒しなければなりません。何より、メガネ屋に相談するよりお医者さんに相談するべき事例であります。
一瞬あせりましたが、それにしては涙の出てる様子も無いし、全く充血もしていません。
そこで「やにこい」とはどういうことかお客さんに確認すると・・・・・
「やりにくい」とか「心地が悪い」とかという意味のようです。
要するに「目の調子が悪いから眼鏡でも作ってくれ」ということなんですよね。ホッと一安心というところ。
尚、この「やにこい」という言葉は他の意味でも使われることが多く、穴水弁を理解する上でもキーワードになっているようです。
「この子はやにこい子で・・・・」と母親が嘆いたりしますが、そのときの意味は「やんちゃな」とか「落ち着きがない」という意味になります。それでいて、単に怒ったり悲観していたりというよりも、どこか愛情を込めた表現なんですよねぇ。
この「やにこい」を理解できたとき、私は初めて穴水の人間になれたのだと実感しました。
メガネで身元判明
能登半島には、知る人ぞ知る自殺の名所があります。
ある日、近くの警察署の刑事さんが、ひとつのメガネを持って来店しました。
「このメガネから分かることを教えていただけませんか?」という趣旨の依頼でしたが、怪訝に思い事情を聞くと、身元不明の女性の水死体が管轄の海岸に漂着し、入水したと思われる自殺の名所の断崖に残されていた遺留品であるとのこと。
そこで、フレームのメーカー名と品番、レンズの種類と度数を調べ、
「メガネケースに書いてある広島県のメガネ屋さんに、この情報を問い合わせれば、 顧客データから抽出できるかもしれません」とアドバイスしました。
ケースだけ別の店から入手した、とも考えられるものの、 コンピューターで顧客管理している店ならば、顧客名からメガネはもちろん、 その逆も出来る可能性があったからです。
後日、先の刑事さんが再び訪れ、アドバイスどおりに身元が判明したとのことで、捜査協力のお礼にと、50度数のテレフォンカードを置いていかれました。
空き巣とメガネ
もうひとつ警察関係ネタを・・・・
当店(穴水店)のお得意様の家に、空き巣が入りました。
手元にあった現金と、有名なスイスの高級腕時計が盗まれたそうです。
そのお客様は以前にも空き巣に入られ、(侵入手口が同じことから同一犯との見解)
その時の教訓から、宝石類や時計といった貴重品は、いかにも当たり前の場所には置かず、床の間に置いたメガネケースの中とか、泥棒の意表を突くような場所に置くようにしていたそうです。
メガネケースの中は案外よさそうに思えます。
メガネなど盗んでも換金できないし、そのままでは使えません。下手にレンズを交換しようとすれば、足がつくことも考えられます。
しかし、その空巣はメガネケースを見破り、中に入っていた時計ごと盗んで行きました。
単に本当にメガネを盗もうとしたのか、たまたま開けてみたら時計が入っていたのか、その真意のほどはわかりません。
ただ言える事は、貴重品は簡単に持ち出せるところに置かない、
戸締りをしっかりする、など油断しないことですね。
トンビはメガネ好き?
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| 穴水灯台上空を優雅に舞うトンビ |
穴水町は周囲を山と海で囲まれ、のどかな田園が広がる人口1万人ほどの小さな町です。
その小さな町にある1店のメガネ屋に、なんと3人も「トンビにメガネをさらわれた」お客様がいるのです。
これは単なる偶然では無いと思われます。
そのうち、二人のお客様は、顔に掛けたままの状態で、しかしながら顔には全くの被害を受けずに、見事にメガネだけをさらわれました。
トンビの鋭い爪に引掻かれれば、顔面に相当の傷を受けるか、最悪の場合、眼球に刺さり失明の可能性すら考えられますから奇跡としか言いようがありません。
また別のお客様は、庭の手入れ中に汗を拭こうと庭石の上にメガネを置き、タオルで顔の汗を拭っている最中に、身近で「バサバサッ」という音を聞いたかと思えば、目の前を大きなトンビが飛んでいき、気が付いたら庭石の上のメガネが跡形も無く消えていたそうです。
そのトンビは、防風林を兼ねたそのお客様の敷地にある杉の木に作った巣に住み着いており、翌春、おそらく枝に積もった雪と一緒に落ちてきたのでしょう、その木の下に見覚えのあるメガネを発見しましたが、とても使える状態ではありませんでした。
数年前、隣の七尾市中島町で、買い物帰りに自転車の籠に入れた食品をトンビにさらわれる事件が頻発して、地元の新聞でも取り上げられたことがありました。実際私も、家族で釣りに出かけたときに、家族が手に持っていたスナック菓子をさらわれたことがあります。
食品をさらわれる、というのはわかりますが、なぜメガネなんでしょうか?
カラスは光るものに興味を示すといいますから、トンビも同じなんでしょうか?
トンビが生息している地域の方は、「油揚げ」以外にも充分ご注意ください。
もしかしたら、いつのまにか紛失してしまった、というメガネは、トンビにさらわれたのかもしれませんよ。
犬もメガネ好き??
一年に何回か、先セル(耳に掛かるところに付いたプラスチック)がボロボロになり、プラスチックレンズならレンズに歯形が付いたメガネに出くわします。
犯人は犬。それも室内で飼われる小さな犬です。犬種でいうとテリア系かポメラニアン系が多いようです。
お客様からその時の状況を聞くうち、ある一定の傾向があることがわかりました。
それは、犬を残して家を留守にした間に、そして飼い主の家族の中でも、もっとも犬がなついている人のメガネが被害に遭う、ということです。
私の想像するに、一人取り残された犬が、寂しい想いをしているときに、最愛の飼い主の匂いが染み付いたメガネで寂しさを紛らわしている、のではないかと思うのです。
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